今回は、目的の文献を上手に検索するコツを、マニュアルとして紹介しようと思います。
ある大学の後輩から、文献を探してほしいという依頼があったので、これを機会に、実際の検索を紹介しながら、マニュアルを作成してみようと思いました。

お題は『青魚のDHAは免疫力に効く』という文献。

初級編
1. 他人の引用文献からの検索

まず最初、実は、私も最も利用している文献検索方法。

ある意味、裏技!
でも、意外に、一番オススメ!
今の世の中、検索エンジンの機能が発達し、いろいろなことを調べることができます。

文献を検索する場合、

目的のキーワード(1~3ワード)+文献

と検索します。必ず、文献というキーワードを入れておきます。

世の中、根拠のない情報が多く存在し、真実が見極めにくいです。その時、文献というキーワードを入れておけば、引用文献・参考文献が記載されている信用性の高い情報だけを抽出することができます。

今回のお題の場合、”DHA 免疫 文献”と検索すれば良いです。

そうすると、まず、J-StageやCiNiiなどの文献が検索されてくるでしょう。

そう、この方法だと、一番最初に文献そのものも検索されてくることがわかると思います。比較的、オープンになっているフリーの論文が上位検索されやすいような感じがします。

次に、引用文献や参考文献が付いた、内容の良い有知識者の記事などが検索されます。コアな情報程、この有知識者の記事情報が重要になってきます。
ほとんどは、これで、事足りてしまうでしょう。

ポイント:
情報源の信用度のジャッチ

記事の内容は必ずしも信用できるとは限りません。信用できる情報程、文献情報がベースになっています。できれば、引用されていた文献の中身まで確認するのが理想。

さて、今回のお題の場合、
必須脂肪酸 | Linus Pauling Institute | Oregon State University
と日本微量栄養素情報センターのページが示されるだろう。

そこの「免疫抑制の可能性:」という章に、説明されています。しっかり、その内容の原文の文献まで示されています。
※エッジなら「ページ内の検索」の機能を使うと、内容の確認が行いやすいです。今回の場合、「免疫」というワードで。

ただし、今回の場合、求めていた内容とは、逆の内容が示されました。
そう、DHAは、自己免疫疾患(アレルギーなど)の免疫の暴走を抑制する成分です。抗炎症として働きます。当然、こういった内容の文献が示されます。

こういった場合、キーワードを変えてみましょう。
私だったら、”DHA 免疫賦活 文献”としてみます。
DHAは出て来ず、真逆の働きをするアラキドン酸などが出てくると思います。

さらに悪あがきして調べるなら、”DHA T細胞 文献”と変えてみます。
やっぱり、免疫抑制系のT細胞の働きが出てくると思います。

今度は、思考を変えて”DHA 風邪 文献”と検索してみよう。
すると、
インフルエンザウイルスの増殖に対するDHAの可能性 | DHA・EPA協議会
という、目的とする内容のページが
Morita, M. et al. Cell. 153,1 (2013):112-25
という文献情報付きで、導かれるでしょう。

この情報から、”Morita, M. et al. Cell. 153,1 (2013):112-25”で検索すると、Pubmedのアブストラクトから英文の原文へとたどり着きます。

DHAから体内でつくられる代謝物がインフルエンザの増殖を抑制するという文献にたどりつきました。

一般的に免疫力の意味で利用される風邪予防やインフル予防とつながります。したがって、『青魚のDHAは免疫力に効く』の根拠になるかなぁと思います。
一方、やっぱり、DHAは免疫抑制だから、無理があるようにも感じられる・・・。

もう少し、周辺論文を調べたり、続報を調べたかったら、この論文のキーワードを利用して、文献検索すると良いでしょう。
難しくはないですが、ちょっと、レベルが上がります。

中級編
2.文献検索サイト

少しレベルの高い文献検索をする場合、文献検索サイトを用いて、検索してみましょう!
信用面では、心配ないのですが、検索後の抽出が少々難しいです。

いろいろな文献検索サイトがあるのですが、今回は、ヒット率が高いJ-GLOBALを使ってみます。

日本語で検索できますが、英文論文も検索されてきます。
ただし、タイトルは、和文です。
なので、タイトルから、ある程度の内容を判断する必要があります。こういったところが、難易度が高い理由。
(たまに、英文論文でも、アブストラクトが自動翻訳されているので、日本語でアブストラクトを読むことができます。)

まぁ、日本の論文を探すのであれば、ヒットしない可能性もあるが、CiNiiを使っても良いと思います。

さて、今回のお題では・・・
”DHA 免疫”で検索すると、やっぱり、免疫調節活性が検索されてくるでしょう。同じように”DHA 免疫賦活”とすると、一致する文献が出てこないと思います。

文献検索の場合、DHAだけでなく、ドコサヘキサエン酸と検索しても良いだろう。DHAだと、別の論文まで、示されてしまいます。
なので、もうちょっと具体的なキーワードで、インフルというキーワードと使ってみましょう。”ドコサヘキサエン酸 インフル”で検索すると、目的の文献が出てきました。
最新の論文の情報です。

脂肪酸代謝物によるインフルエンザウイルス増殖抑制
という文献が示されるだろう。
この論文を入手したければ、JDreamIII(有料)で文献複写依頼などを行うと良いです。まぁ、入手できないケースもあるが。
また、文献にもよるけど、メディカルオンラインを利用するのも一手です。

さらに高度な文献検索を行うのであれば、Pubmedなどを用いて英語ベースで文献検索を行う必要があります。
Humanの臨床試験に絞ったり、いろいろな絞り込みテクニックを駆使する必要があります。

まぁ、普通の人には、Pubmedなどでの検索は必要ないだろう。
必要なのは、学術部や研究者のみ。

最後に
この健康食品・サプリメントの業界って、意外に、和文論文くらいなら営業マンでも多少読めなければならないです。
最低限、自分の会社に関係する素材の論文くらい。

また、近年は、行政やメディア(広告考査時)から根拠なる文献を求められるケースも増えています。
大手さんは、学術部を持っているので簡単に対応できるかもしれないが、中小企業は、対応できずに泣き寝入りのケースも多いです。
場合よっては、優利に広告展開できる場合もあります。
サイエンティフィックマーケティングという奴です。

是非、この方法を上手く活用いただければと思います。