近年、NMNを皮切りに、食薬区分リストに収載されていない様々な新規物質が流通するようになりました。5-デアザフラビンも、その1つです。



一方、5-デアザフラビンとは、総称であり、様々な5-デアザフラビンも存在します。
通商TND1128である10-ethyl-3-methylpyrimido[4,5-b]quinoline-2,4(3H,10H)-dioneも、5-デアザフラビンの1つです。

こういった新規成分の特許や販売の戦略の過去を見ていくと、戦略と成功と失敗が検証できます。

今回は、NMNと5-ALAの例からTND1128の戦略を検証していこうと思います。

まず、NMNについては、完全に後発の中国企業に乗っ取られたと言っても過言ではない。
その要因は、有効な物質特許や製法特許を取得せずに展開したことだと思います。

こういった化学品の合成や発酵製造は、中国が最も得意とするところ。
発酵製造に関しては、協和発酵の上海工場ができた時、日本の技術が流れちゃっているんですけど・・・。
近年、酵素合成も、得意とする中国企業も増えてきています。

真っ向勝負になったら、絶対に敵わない。
結果、流通した95%以上が中国原料(日本で加工が加えられ日本製造で表示)という状況になったのです。

まぁ、それでも、日本企業は、NMNのヒト臨床試験などを行い続け、中国企業のエビデンスを蓄え続けている状況もある。
NMNのような純品原料だと、エビデンスが利用できてしまう。
だからと言って、用途特許等で防衛・牽制ができる訳ではない。特に、アンチエイジング領域は、老化の遅延など、薬機法に抵触する内容だと、ほとんど防衛力がない。

健康食品サプリメント分野の特許戦略は、今や私の専門分野でもあるのだが・・・
マーケット(薬機法や景品表示方法含む)をしならい人間が特許申請を行うと、全く有効性を持たない特許になることも多々ある。
儲かるのは、特許事務所さんだけ。

新規物質だと、有効性の高い特許戦略の幅も広いのに、非常に勿体ない。

反対に、強い特許戦略で展開した素材は、5-ALAです。
この素材に対しては、出光会とのご縁などから、コスモ石油が取り扱っていた頃から紹介を受け、市場動向を見てきました。

基本、5-ALAは強い物質特許を取得してからの展開でした。
なので、この物質特許が存在する期間は、中国企業も、不用意に手が出せない状況が続いています。

一方、すでに、中国では、5-ALAの原料が完成しており、特許が切れるのを待っている状態。

鳴かず飛ばずの時期があまりにも長かった点が、ちょっと痛かったかなぁ・・・。

そして、日本サイドでは、アラブ系企業をスポンサーに付けつつ、ちょっとした極プチブームが起きたことをきっかけに、ヒト臨床試験や周辺特許の取得を活発化させました。
機能性表示食品領域では、もう中国原料は入りにくい構図ができつつあります。

強い特許が取得されると、中国で安い模倣原料ができにくく、市場も大きくなりにくいというデメリットがあります。
また、どんな特許も、必ず切れる時期があります。

5-ALAの場合、ヒト臨床試験と共に、特許戦略を行っていったので、滑り込みで防衛完了って感じだと思います。
まぁ、このクラスの会社さんだと、国内特許に限らず国際特許も取得して、日本だけでなく海外でもオンリーワン原料として展開できる状況ができつつあるでしょう。

TND1128も、5-ALAのような物質特許を取得したり、それに準じるような特許を固めていくべきだっただろう。
用途特許の「ATP産生」も、厳密には薬機法に抵触するため、クリニックルートのようなグレー市場でしか利用できない。
今は、お目こぼしされているが、市場が大きくなると、薬機法や景品表示法で行政指導の対象となる。医薬品にATP製剤があるから、特に、狙われやすいだろう。

すでに、日本の中国系商社さんが中国産TND1128の原料を流通し始めていますし、弊社にも中国から直接売り込みがたくさん届く。

TND1128の商標申請も、タイミングが間違っていると思う。
2021年の論文が出る前に申請しなければならない。現在、1類と5類で出願されているが、登録できるのかな?という感じです。

何れにしても、5-デアザフラビンとしてのTND1128の中国原料の流通は止まらないだろう。
NMNのように、日本製造を表示できる原料が現れるまで少々時間はかかるだろうが、今、中国企業の多くは、NMNで味を占め、簡単に日本製造にできると思っている。
今のように行政が緩すぎるのも考えものなのだが、今後、規制を厳しくしてくる可能性もあるだろう。

弊社が中国産TND1128の原料を流通させることはないだろう。
一方、ニーズもあるので、中国系商社から仕入れてOEM製造していくだろう。
ただし、食薬区分や消費者トラブルに対する承諾書を提出してもらうし、原則、TND1128の名前も使用しないよう求めていくだろう。
市場では、5-デアザフラビンの総称が根付き始め、消費者にTND1128の物質名を訴えるメリットが全くないからです。

ある意味、5-デアザフラビンの市場は、どんな5-デアザフラビンであっても消費者はわからないため、少し歪な市場になりつつある。
良識のある会社さんは、価格が倍でも、安い5-デアザフラビンより、流通実績があり食薬区分に入る可能性のあるTND1128の10-ethyl-3-methylpyrimido[4,5-b]quinoline-2,4(3H,10H)-dioneを選択する。

何れにしても、第二のNMNになるか?は、弊社サイトで述べられている通り、アカデミック度の違いや市場背景がNMNと全く異なるため、今は何とも言えない状況だろう。

仮に市場が大きくなっても、NMNのように中国企業による市場乗っ取りが起こる可能性も高い。

弊社としては、まだ大した市場になっておらず、大豆由来フェリチン鉄のプチブームが未だ続いているため、5-デアザフラビンを積極的に追うことはないだろう。
今は、大豆由来フェリチン鉄の市場を固めるのみ。今後も、新たに用途特許も出していかなければならない。