本日は、久しぶりに、最新研究紹介。ジオスゲニンとオートファジー、そして疾患予防・治療の可能性について、たまたま文献調査をしていたのですが、一気に知見が広まったのでご紹介です。。

この報告では、オニドコロという山芋から分離した成分でオートファジーへの働きについて試験されています。

Steroidal Saponins Isolated from the Rhizome of Dioscorea tokoro Inhibit Cell Growth and Autophagy in Hepatocellular Carcinoma Cells

Abstract
Our preliminary screening identified an extract from the rhizome of Dioscorea tokoro, which strongly suppressed the proliferation of HepG2 hepatocellular carcinoma cells and inhibited autophagy. This study aimed to isolate active compounds from the rhizome of D. tokoro that exert antiproliferative effects and inhibit autophagy. The bioassay-guided fractionation of the active fraction led to the isolation of two spirostan-type steroidal saponins, dioscin (1) and yamogenin 3-O-α-l-rhamnopyranosyl (1→4)-O-α-l-rhamnopyranosyl(1→2)-β-d-glucopyranoside (2), and the frostane-type steroidal saponin protodioscin (3) from the n-BuOH fraction. Furthermore, acid hydrolysis of 1 and 2 produced the aglycones diosgenin (4) and yamogenin (5), respectively. Compounds 1-5 suppressed proliferation of HepG2 cells. The analysis of structure-activity relationships indicated that the 25(R)-conformation, structures with a sugar moiety, and the spirostan-type aglycone moiety contributed to antiproliferative activity. Analysis of autophagy-related proteins demonstrated that 1-3 clearly increased the levels of both LC3-II and p62, implying that 1-3 deregulate the autophagic pathway by blocking autophagic flux, which results in p62 and LC3-II accumulation. In contrast, 1-3 did not significantly affect caspase-3 activation and PARP cleavage, suggesting that the antiproliferative activity of 1-3 occurred independently of caspase-3-mediated apoptosis. In summary, our study showed that 1-3, active compounds in the rhizome of D. tokoro, suppressed cell proliferation and autophagy, and might be potential agents for autophagy research and cancer chemoprevention.
Life (Basel). 2021;11(8):749.

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Dioscorea tokoroの根茎から単離されたステロイドサポニンは肝細胞癌細胞の細胞増殖とオートファジーを阻害する

要旨
 私たちの予備スクリーニングでは、HepG2肝細胞癌細胞の増殖を強力に抑制し、オートファジーを阻害するDioscorea tokoro(通称:オニドコロ)の根茎からの抽出物を特定しました。この研究は、抗増殖効果を発揮し、オートファジーを阻害するD.tokoroの根茎から活性化合物を分離することを目的とした。活性画分のバイオアッセイ誘導分画により、2つのスピロスタン型ステロイドサポニンであるジオシン(1)とヤモゲニン3-O-α-l-ラムノピラノシル(1→4)-O-α-l-ラムノピラノシル( 1→2)-β-d-グルコピラノシド(2)、およびn-BuOH画分からのフロスタン型ステロイドサポニンプロトジオシン(3)。さらに、12の酸加水分解により、それぞれアグリコンのジオスゲニン(4)とヤモゲニン(5)が生成されました。化合物1-5はHepG2細胞の増殖を抑制しました。構造と活性の関係の分析は、25(R)-コンフォメーション、糖部分を持つ構造、およびスピロスタン型アグリコン部分が抗増殖活性に寄与することを示しました。オートファジー関連タンパク質の分析は、1-3がLC3-IIとp62の両方のレベルを明らかに増加させたことを示し、1-3がオートファジーフラックスをブロックすることによってオートファジー経路を規制緩和し、p62とLC3-IIの蓄積をもたらすことを意味します。対照的に、1-3はカスパーゼ-3の活性化とPARP切断に有意な影響を与えず、1-3の抗増殖活性がカスパーゼ-3を介したアポトーシスとは独立して発生したことを示唆しています。要約すると、私たちの研究は、D.tokoroの根茎に含まれる1-3の活性化合物が細胞増殖とオートファジーを抑制し、オートファジー研究と癌の化学的予防の潜在的な薬剤である可能性があることを示しました。

p62: リン酸化が連続的に起きることで選択的オートファジーなどの生体防御に関わる
LC3-II: オートファジーの誘導や抑制を評価するための指標

この文献を読んでわかった重要ポイントは、以下の通り。

ジオスゲニンとその配糖体ではオートファジーへの働きが異なる
ガン治療の観点ではオートファジーを抑制した方が良い

ガン関係の研究では、ジオスゲニンではなく、ジオスシン(ジオスゲニンの配糖体の1つ)を用いて試験が行われている理由がよく理解できました。
実際、オートファジー抑制剤と抗がん剤の併用なども、検証されているようです。



過去に紹介した別の文献では、ジオスゲニンがアポトーシスを誘導すると報告されており、ジオスゲニン誘導体とは真逆の働きが報告されています。



そして、アルツハイマー型認知症に関しては、ガン治療と異なり、オートファジーを活性化させた方が好ましいようです。



まぁ、こういったことは、機能性成分では、よくあることであったりもする。

プロテオグリカンが良い例である。
プロテオグリカンの両端にあるC末端とN末端では、全く異なる働きをする。

ジオスゲニンの場合、構造から推測すると、末端の何れかのメチル基がオートファジー抑制に働き、配糖体では糖が結合している水酸基でオートファジー活性/誘導が行われいるのかもしれない。
そこは、想像の範囲でしかない。

オートファジー活性に関しては、配糖体を切るために行う酸処理が行われているかいないかで、全く働きも異なってくることを示しています。
とにかく、非常に興味深い研究でした。

なお、今回のような試験管試験の特徴として、消化や代謝等が絡むヒトでの働きでは、同じ働きをするとは限らない。臨床では、全く異なる結果が出ることもある。
非常に難しいところ。
特に、ジオスゲニン配糖体は、消化や代謝でジオスゲニンに変化する。さらに、山芋中のジオスゲニン配糖体は、2糖体3糖体など、複数の配糖体が存在する。山芋によっても異なると予測される。

今後、いろいろな知見が報告されるだろう。非常に楽しみです。


P.S.
今日は、ifiaでオートファジーの講演が行われているはず。
聴講したかったなぁ・・・。

この記事の筆者:栗山 雄司 (博士)

株式会社アンチエイジング・プロ 常務取締役 COO / SloIron Inc. 取締役 技術アドバイザー / 順天堂大学医学部 総合診療科 研究員

kuri photoM2 広告にも精通し、日々、売れる商品(;顧客の成功)のことを考え、健康食品サプリメントの機能性原料開発やOME製造を行っています。