年始にも紹介いたしましたが、弊社では、豆由来フェリチン鉄(フェリチン)のヒト臨床試験を実施し、私は、その論文化に取り組んでいます。
今は、ひとまず、イントロをまとめながら、研究の整理を行っています。

そこで、今回、紹介させていただくのは、大豆からフェリチン鉄が発見された論文。
これ以上古い論文で見つからなかったため、おそらく、これが大豆由来フェリチンを紹介した初めての論文だろう。


Isolation and characterization of ferritin from soyabeans (Glycine max)

Abstract
Ferritin from the soyabean Glycine max was isolated and characterized. The protein has many features in common with ferritin from mammalian systems, including extensive sequence homology, as determined by two-dimensional peptide mapping. No immunocross-reactivity between the plant and animal proteins was detected. The ferritin isolated by MgCl2 precipitation has a single subunit of 28 kDa, whereas the ferritin remaining in the supernatant exhibits marked heterogeneity, with a main subunit of 22 kDa. This form of the protein appears to be the result of specific proteolytic processing that is not affected by serine protease inhibitors, and appears only after the seeds have been soaked long enough to induce germination. The appearance of the 22-kDa form corresponds to the appearance of "crystalline arrays" of ferritin in the amyloplasts of the plant cotyledons and may represent a plant form of hemosiderin. In support of this hypothesis, the 22-kDa protein appears to be incompletely assembled, as determined by sucrose gradient centrifugation and iron uptake studies. Although ferritin is normally quite resistant to proteolysis, the 22-kDa protein is easily generated from the 28-kDa form by treatment with subtilisin, suggesting the presence of a specific, protease-sensitive sequence on the protein's surface, possibly used to mark the phytoferritin for conversion to hemosiderin and construction of ferritin crystalline arrays.
J Biol Chem 1987;262(28):13780-8.

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大豆からのフェリチンの単離と特性評価

要旨
 大豆(Glycinemax)からのフェリチンが分離され、特性が明らかにされました。このタンパク質は、2次元ペプチドマッピングによって決定されるように、広範な配列相同性を含む、哺乳類システムからのフェリチンと共通する多くの特徴を持っています。植物と動物のタンパク質間の免疫交差反応性は検出されませんでした。 MgCl2沈殿によって分離されたフェリチンは28kDaの単一サブユニットを持っていますが、上澄みに残っているフェリチンは22kDaのメインサブユニットで顕著な不均一性を示します。この形態のタンパク質は、セリンプロテアーゼ阻害剤の影響を受けない特定のタンパク質分解プロセシングの結果であるように見え、発芽を誘発するのに十分な時間種子を浸した後にのみ現れます。 22 kDa型の出現は、植物子葉のアミロプラストにおけるフェリチンの「結晶配列」の出現に対応し、植物型のヘモジデリンを表している可能性があります。この仮説を支持するために、22 kDaのタンパク質は、ショ糖勾配遠心分離と鉄取り込み研究によって決定されるように、不完全に組み立てられているように見えます。フェリチンは通常、タンパク質分解に対して非常に耐性がありますが、22 kDaのタンパク質は、スブチリシンで処理することにより28 kDaの形態から容易に生成され、タンパク質の表面に特定のプロテアーゼ感受性配列が存在することを示唆しています。ヘモジデリンへの変換およびフェリチン結晶アレイの構築のためである。


こういったタンパク質の構造解析って、分析機器や分析方法の進化により、1980年代から行われるようになりました。
云わば、この研究は、当時、最先端の研究だったでしょう。
日本では、こういった試験ができるようになったのは、1990年代(私の大学時代)に入ってからだと思う。それも、トップクラスの研究所でのみ行われていたと記憶しています。

そして、この論文は1987年の論文であり、見方によっては、大豆由来フェリチン鉄が発見されてからたった35年しか経っていないとも言える。

そして、そこから約30年で実用化まで漕ぎつけた訳ですが、私も製造方法確立に関わっているから強く感じるのですが、製品化には、いろいろ大変でした。

まず、やっぱり、たんぱくに包まれた鉄なので、そのタンパクだるアポフェリチンを壊さずに抽出するのは、非常に難しいです。
ラボレベルではできても、実機生産レベルでは上手くいかないということもありました。

次の問題、コストの壁。
ようやく安定して製造できるようになっても、上市当初は、製造原価が非常に高かったです。
かつ、菌が製造工程で増殖し、殺菌工程が必要だった。
それを解決できたのは、2021年初めです。

今や、トン単位で製造されている原料にまで成長していますが、今後、もっと効率良く、さらにもっと非変性のフェリチン鉄の抽出が求められてくると思います。

また、この素材を効率良く利用する方法の開発なども求められます。
すでに、その方法を開発し、近々、特許申請予定です。今、申請書類の最終チェック中。
少しづつの積み重ねです。

この記事の筆者:栗山 雄司 (博士)

株式会社アンチエイジング・プロ 常務取締役 COO / SloIron Inc. 取締役 技術アドバイザー / 順天堂大学医学部 総合診療科 研究員

kuri photoM2 広告にも精通し、日々、売れる商品(;顧客の成功)のことを考え、健康食品サプリメントの機能性原料開発やOME製造を行っています。