すでに、3つのヒト臨床試験を行っていて、受託臨床試験実施機関CRO(ヒト臨床試験の委託先)を利用しながら機能性表示食品のプロジェクトに取り組み、いろいろと感じることがあります。
学んだことも非常に多かったです。

機能性表示食品の制度についてですが、徐々に厳しくなってきています。
試験の時点では対応してても、申請時には対応しないということが多々あります。制度の変化の先を見通して、プロトコールを組む必要があります。
こういった状況は、対応する側からすると、たまらんです・・・。

まず、CROの選び方は、どんな体制で取り組めるかで、大きく条件が変わってきます。

プロトコール作成やスクリーニング時の被験者選定から徹底的に自社(プロフェクトチーム)で管理でき、医療統計のチェックが可能で論文も作成できる環境があれば、安くても構わないです。
具体的には、博士・修士クラスが3人以上で取り組める場合です。

その体制が作れないのであれば、高くても的確にサポートしてくれるCROを選ぶべきです。
もしくは、理系のコンサルさんを付けるべきです。ちょうど、ノウハウが蓄積されてきた頃で、的確な管理サポートをしてくださるでしょう。

加えて、理系の人間に限定せずに、役割分担しつつ、できるだけ多くの人間がチェックできる管理体制が不可欠です。できる人だけに業務を集中させるのは、良くないです。
基本、博士や経験豊富な修士クラスは、実務を行わず、ジャッチだけする体制にしなければ、全部引き受けることになります。そして、結果に対する責任まで・・・。

実際問題、私だけで、かつ通常業務を行いながら管理進行を行なったケースでは、機能性表示制度での実情について調査するのも、プロトコール作るのも、被験者選定するのも、論文の内容を決めるのも、執筆するのも、全部一人だったので、ものすごく大変で孤独でした。
かつ、条件設定で後悔の部分も多い。
(社内に頼れないんだったら、コストがかかっても、一緒に進めてくれるコンサルさんを利用すべきだったというのが私の一番の失敗。)

一方、プロジェクトで進めている案件は、みんなの意見が聞けるので精神的にも楽だし、ミスも起こりにくいです。
まぁ、それでも多少、条件設定では、後からこうしておけば良かったという後悔の部分が出てくるんですが・・・少ないです。

次に、私はあまり関係ないのですが、意外にトラブりやすい部分。誰が論文を書いて、どんなメンバーで投稿するか?という点。
論文の内容によって、機能性表示食品の対応度(表示できる可能性)やクレイム内容(文言)が変わってきます。制度を知らない大学の先生や学生にかかせるのには無理があり、だからと言って、CRO会社に書かせようとしても、周辺論文も保有しておらず、無理が生じます。だからと言って、利権関係者が口出しし過ぎると、利益相反も強くなってくるので、注意も必要。
CROのスタッフでも、修士クラスの人が書くのか、博士クラスの人が書くのかでも、大きく条件が変わってきます。いろいろ難しい。
また、妥当な論文作成の費用についても、非常に難しく、私の場合、プライスレスです(笑)。よほどの顧客でない限り、お金もらってもやりたくない。反対に、信頼関係がある上顧客であれば、費用はいらない。

最後に。
機能性表示食品対応に取り組み、ここ数年を振り返ると、失敗も含め、いろいろ学べました。そして、将来の原料メーカー像も見えてきた感じがします。

今後、原料メーカーは、エビデンス蓄積の継続が行なっていける会社しか評価されにくくなります。
そして、エビデンス蓄積などマネージメントやテクニカルサポートの人材と出荷担当のオペレーションの人材だけに集約(二極化)され、営業マンは不要になってくるでしょう。ドライな業界に変化していくと思います。

加えて、アメリカのように、メーカーの統合(→人件費の圧縮)が進んだり、WEB上での受発注など業務の効率化が進むでしょう。また、大手食品メーカーが原料レベルから事業展開してくるであろうと予測され、原料メーカーの生き残りも厳しくなるでしょう。

その流れに取り残されないよう、日々、努力を行っていくだけです。

この記事の筆者:栗山 雄司 (博士)

株式会社アンチエイジング・プロ 常務取締役 COO / SloIron Inc. 取締役 技術アドバイザー / 順天堂大学医学部 総合診療科 研究員

kuri photoM2 広告にも精通し、日々、売れる商品(;顧客の成功)のことを考え、健康食品サプリメントの機能性原料開発やOME製造を行っています。