先日、弊社の顧客でもある協力会社からの依頼もあり、ある葉酸サプリの表示違反をリストアップしてみました。
あまりにも酷かったです。
その内容を解説と共に紹介です。

1.天然型酵母葉酸
合成葉酸が添加された葉酸含有酵母です。
天然を謳いつつ、吸収の良い合成型(モノグルタミン酸型)葉酸を謳っています。
この点は、明らかな矛盾。

合成のモノグルタミン酸型葉酸をあたかも(安心安全をイメージさせる)天然のポリグルタミン酸型葉酸(食事性葉酸)のように表現するのは、明らかに優良誤認です。
食事性葉酸(天然の形状)であるポリグルタミン酸型葉酸しか天然葉酸と表現できないと思います。

そもそも、この葉酸含有酵母は、酵母に合成葉酸を添加して吸わせた原料です。酵母の中でモノグルタミン酸型に変わっているという情報サイトで書かれていますが、そんなことはありません。したがって、酵母に吸わせる葉酸が合成葉酸なので、決して天然とは言えないです。断言します。言えるのは、かろうじて「添加物ではない葉酸原料配合」くらいでしょう。

ちなみに、葉酸含有酵母の原料メーカーさんも、決してこの表現を認めた訳ではないでしょう。業界でも長く大きなメーカーさんなので、それなりの倫理観と良識をお持ちです。

2.「水溶性ビタミンの葉酸は多く摂っても安全」という表現
これは、明らかに誤りで、妊婦にとって危険な表現です。
水溶性ビタミンは、必ずしも過剰摂取がないわけではありません。安全なのは、上限が設定されていないビタミンB1・ B2などに限られます。

特に葉酸は、1000µgからと推奨量と上限量の差が少ないため、過剰摂取に対して、特に注意が必要です。さらに、合成の葉酸は、吸収が良いので、特に注意が必要です。以前、紹介いたしましたが、欧米などでは、合成と天然の葉酸の吸収の差を加味して過剰症摂取にならないような基準に変更されています。日本も、早々に対応すべきです。

最新の妊婦の葉酸摂取基準と食事性葉酸塩当量(DFE)
http://kuriyamayuji.doorblog.jp/archives/51463330.html


3.栄養機能食品の表現
栄養機能食品と謳っていますが、商品目の葉酸の栄養機能食品ではなく、 ビタミンB6とビオチンでの栄養機能食品です。 B6やビオチンの栄養機能表示を行わずに、あたかも葉酸の栄養機能食品に見せているのは、確実にアウトです。
消費者庁の違反例に示されているものに類似しています。
栄養機能食品を謳う場合は、きちんと以下のような機能の文言を入れて、何の栄養機能食品なのかを明確にする必要があります。

ビオチンは、皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素です。
ビタミンB6は、たんぱく質からのエネルギーの産生と皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素です。

4.無添加の表現
情報サイトから見つけた原材料表示
乾燥酵母、葉酸含有酵母、もろみ酢粉末、燕の巣加工品(デキストリン、酵素処理燕窩)、ミネラルイースト、ヨウ素含有酵母、フィッシュコラーゲン(ゼラチン)、馬プラセンタエキス末、大麦若葉、ケール、ブロッコリー、キャベツ、大根葉、かぼちゃ、さつまいも(紫芋)、チンゲン菜、パセリ、人参、セロリ、苦瓜、ほうれん草、桑の葉、モロヘイヤ、よもぎ、白菜、アスパラガス、トマト、野沢菜、れんこん、 貝殻未焼成カルシウム、セルロース、クエン酸鉄 Na 、ステアリン酸 Ca、クエン酸、ビタミン B6 、ビオチン、サンゴカルシウム、着色料(β - カロテン)、ビタミン C、ヒアルロン酸、ビタミン E 、ナイアシン、パントテン酸 Ca 、ビタミンB1 、ビタミン B2 、ビタミンA 、葉酸、ビタミン D3 、ビタミンB12

まず、添加物をで示した通り、配合されている合成ビタミン自身が食品添加物です。LPなどに原材料表示を示さず、かつ添加物だらけの商品設計で、無添加を謳うこと自身、優良誤認に当たる思います。
新基準では、/などで区分けする必要があります。
さらに、着色料(β -カロテン)となっているのに、無着色を謳っています。無着色は謳わなければええのに・・・と思います。

ちなみに、新設計では、葉酸含有酵母だけでなく、添加物の葉酸も加えているんですね。
世界的に葉酸の価格が高騰し、葉酸含有酵母も価格が上がったからでしょうか・・・。ここまで、コストにシビアにならなくても・・・。

5.ビタミン・ミネラル・アミノ酸の強調表示
〇種のビタミン・〇種のミネラル、〇種のアミノ酸と表現されていますが、この量のクリエイティブは、健康増進法の優良誤認に当たります。
特に、ビタミンやミネラルの成分量が表示されていないので良くありません。
これは、他のサイトでも多い違反例です。
ビタミン・ミネラルは、含む旨の下限値が法的に設定されています。東京都で示している強調表示の資料がわかりやすく説明しています。

>> 強調表示について

厳しい行政では、ビタミン・ミネラルに限らず、他の成分でも成分量が表記されていないと優良誤認とみなされることがあります。

まだまだあるのですが、指摘は、ここまでにしておこうと思います・・・。

こういった形で、サプリメント市場が荒れ始めています。
この葉酸の商品に対しては、妊婦さんもしくは妊婦になろうとしている女性の「少しでも赤ちゃんが元気に生まれてくるように」という温かい気持ちを利用しつつ、誤認させています。
どんなにLP上でキレイなことを言っても、倫理的にどうなのでしょうか?
疑問です。
業界は、こういった優良誤認の表現を排除し、市場の適正化を行っていかなければ、市場が荒廃して衰退してしまいます。私の場合は実名なので、通常、あまりこういった指摘は行わないのですが、今回、あまりにも酷かったので、あえて行ってみました。
やっぱり、消費者が誤解しないよう正しく表現しないとダメだと思います。業界全体で、監視していく必要があると思います。

ちなみに、この葉酸の市場に関しては、適正化したいという想いが強いです。そのための戦略も着々と進めております。

この記事の筆者:栗山 雄司 (博士)

株式会社アンチエイジング・プロ 常務取締役 COO / SloIron Inc. 取締役 技術アドバイザー / 順天堂大学医学部 総合診療科 研究員

kuri photoM2 広告にも精通し、日々、売れる商品(;顧客の成功)のことを考え、健康食品サプリメントの機能性原料開発やOME製造を行っています。