意外に、葉酸について知らないことがたくさんあったので、今回、少々まとめてみました。

まず、葉酸とは、葉野菜、豆類、レバーなどに多く含まれるビタミンB群の1種で、赤ちゃんの健全な発育や血液を造ることに関わる働きをしているため、妊娠を希望する女性にとって重要な栄養素です。

胎児の先天異常(神経管閉鎖障害)の予防効果が示されており、厚生労働省も、妊婦の摂取を推奨しております。2002年度から使用される母子健康手帳に「妊産婦の葉酸摂取に関する記載」を任意記載事項として追加さています。

2011年・2013年 葉酸普及研究会
厚生労働省 難治性疾患克服事業・研究班
http://yousan-labo.jp/

NIH(National Institutes of Health アメリカ国立衛生研究所)が推奨している妊娠中の葉酸摂取量は、600µg DFE(dietary folate equivalents 食事性葉酸塩当量)です。DFEは、葉酸の種類(吸収率の差)や摂取方法によって補正計算された量です。食事性葉酸塩当量なのが、日本の制度との違いです。

MedlinePlus(NHI)
Folic Acid 葉酸

https://www.nlm.nih.gov/medlineplus/druginfo/natural/1017.html
 ↓
日本語訳( 「統合医療」情報発信サイト)
http://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/overseas/c03/05.html

1 µg DFE = 食事性葉酸塩1 µg
1 µg DFE = 食品と共に摂取された栄養強化食品やサプリメント由来の葉酸0.6 µg
1 µg DFE = 空腹時に摂取したサプリメント由来の葉酸0.5 µg


このようにDFEで設定されるのは、食事性葉酸塩がポリグルタミン酸型であり、サプリメントに用いられる葉酸(主に合成※酵母葉酸も合成品由来、参考:露呈した葉酸含有酵母の秘密)はモノグルタミン酸型であるためです。両者の吸収率の差を考慮してのことです。
合成の葉酸(モノグルタミン酸型)は、全体の85%が利用され、生体利用効率の高いことが特徴です。一方、食事性葉酸塩(ポリグルタミン酸型)は、消化吸収されてモノグルタミン酸型に変換されてから利用されるため、全体の50%だけが利用と、生物利用能が低くなってしまいます。
詳しくは、国立健康・栄養研究所の葉酸の解説(A.葉酸とは?とD.葉酸の吸収や働き)を参考にされると良いです。

国立健康・栄養研究所 葉酸解説
http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail652.html

この600µg DFEという葉酸に妊婦摂取基準は、EU(欧州)でも取り入れようとされています。昨年11月に以下のような意見書が出されています。

欧州食品安全機関(EFSA)
葉酸の食事摂取基準に関する科学的意見書

https://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu04160890149

日本の妊婦の摂取基準は、推定平均必要量400µg、推奨量480µgとなっています。この摂取量の数字は、4の「食事性葉酸としては2倍の 800µg/日に相当する。」という表現からもわかるのですが、代謝を加味した記述もされており、これらの基準をDFEに換算すると推定平均必要量800µg DFE、推奨量960µg DFEとなります。

日本人の食事摂取基準(報告書)葉酸
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000067134.pdf
3-3.妊娠可能な女性への注意事項を参照

商品販売の視点から都合の良いように好き勝手に記述されていることも多々ありますが、本質は本記事にまとめてあります。確信を持って正しく認識していただくためにも、今回は引用もしっかりさせました。消費者は誤った情報に騙されてはいけませんし、赤ちゃんの健康と非常に大事なことなので、行政は、悪質な商品をしっかり取り締まっていくべきだと思います!

極論を言うと、合成の葉酸も、天然の葉酸(食事性葉酸塩)も、個々の嗜好性で正しく摂取すれば良いだけだと思います。
合成は合成で、コスト面や吸収面で優れていますし、天然は天然で、安心という良さがあります。合成が良いと考える人もいるでしょうし、天然を選ぶ人もいるでしょう。

一方、先述の通り、諸外国がやや低めの600µg/日 DFEと摂取基準を定め始めているので、今後、日本の摂取基準にも反映されてくると思います。次の摂取基準では、DFE(dietary folate equivalents 食事性葉酸塩当量)とい言葉が導入されるかもしれないです。そこは、注意が必要だと思います。
ちなみに、この部分がわかりにくいということで、平成23年に国民生活センターが以下のように食事性葉酸塩当量について述べているんですが、最新(2015年度版)の食事摂取基準には、全く反映されていません・・・。

胎児の正常な発育に役立つ「葉酸」を摂取できるとうたった健康食品
http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20110526_1.pdf
3ページ目を参照

あと、葉酸はトクホで「疾病リスク低減表示」にできるのに、商品は1つも販売されていませんしね・・・。
不思議なことが多いです。

葉酸の疾病リスク低減表示の内容
この食品は葉酸を豊富に含みます。適切な量の葉酸を含む健康的な食事は、女性にとって、二分脊椎などの神経管閉鎖障害を持つ子どもが生まれるリスクを低減するかもしれません。

最後に、私の持論は「葉酸は、妊娠が発覚(主に2ヶ月目;4週目から7週目)し始めてから摂取し始めても、もう遅いこともありうるので、妊娠前から計画的に摂取すべき。大事なのは超妊娠初期(妊娠0週から4週目までの、排卵し、受精、着床、分裂を重ねる大切な期間)の摂取。」とうものです。
外的要因が原因となっている先天性異常は、主に主要器官が形成される「妊娠4週(絶対感受期)から12週頃(臨界期)」が異常の発症する時期が大多数となっているためです。
まあ、2000年に厚生労働省が推奨したのは、妊娠の可能性がある女性に対してなので、妊娠前からの摂取が望ましいとも解釈できるのでしょうけど・・・。

そもそも、成人女性の推定平均必要量は200µgとなっています。超少子化の日本のためにも、妊娠する前から200µg(400µg DFE)で摂取してもらいたいものです。
私は、今後も、そのための良い商品づくりに取り組んでいきたいと思います!
また、この情報を多くの方に活用してもらえればと考えております。このページへのリンクやSNSでのシェアは、大歓迎です。

この記事の筆者:栗山 雄司 (博士)

株式会社アンチエイジング・プロ 常務取締役 COO / SloIron Inc. 取締役 技術アドバイザー / 順天堂大学医学部 総合診療科 研究員

kuri photoM2 広告にも精通し、日々、売れる商品(;顧客の成功)のことを考え、健康食品サプリメントの機能性原料開発やOME製造を行っています。